伝統医学は古代から行われてきた古典医学であり、現代はその伝承医学が病気を未然に防ぐ予防医学や代替医療として認識されるようになってきました。この100年足たらずのことですが、西洋医学が急速に発展したことにより、伝統医学はうさんくさいものとして認識されるようになり、影をひそめたのでした。ところが、西暦2000年ごろから、これらを見直す動きが世界的に強まり、現在も加速度的に伝統医学が見直されてきています。過去の群雄割拠の時代には、国は存在していませんでしたが、現在のインド周辺、現在の中国周辺、そして、現在のタイ周辺には、それぞれ古典医学が存在していました。それらは現在もインド医学、中医学と呼ばれていますが、タイ医学はそれら2つの影響を受けたものとして知られています。それらの伝統医学は、気候や風土、その土地の習慣や民族性によって、それぞれ時代と共に異なる形に発展しました。そして、現代に至っては、それぞれが独立して存在し、融合する動きは図られていません。いずれにしても、これらは人類の叡智の結晶であり、古いものだからという理由で検証もせずに捨て去ることは、ひょっとしたら、人類の財産をどぶに捨てるのと同じことなのかもしれません。後になって後悔する前にこれを検証してゆこうと思います。現代医学(西洋医学)も完全ではありません。その治療法は常に変化し、過去の常識は次々に塗り替えられていくものです。例えば、以前はやけどをしたら、冷やしてはいけないものでした。でも、現代はすぐに冷やせと言われます。最近は、誰もが情報を発信できる時代です。ネット上にもたくさんの嘘やいいかげんな情報が氾濫しています。TTMA(特定非営利活動法人日本トラディショナルタイマッサージ協会)は2000年より、タイ古式マッサージを普及するための業界団体として活動して参りました。少なからず、私たちはいい加減な情報を提供することは致しませんでした。だからこそ、私たちが伝統医学を検証し、それを多くの人たちに伝えることが使命と感じました。この伝統医学を検証する試みは、どの国に伝わった伝統医学がいい悪いではなく、これを利用して役立てていこうとする私たちにとって、これが本当に効果があるのかないのかを検証することが最も大切であると考えています。
TTMAでは、リラクゼーションに過ぎなかったマッサージや各種トリートメントを総合的な治療法として実践しています。これは、タイ伝統医学の理論だけでは臨床治療に限界を感じたことに端を発していますが、タイ伝統医学は残念ながら文献が現存していないため、もともと影響を受けたとされるインド医学や中医学についても調査を行ってきました。しかし、どの古典医学も多くの謎や不明点が残されているのも事実でした。例えば、タイ医学の元になったインド医学ですが、エネルギーの通り道が異なります。ヨガでいう「ナーディ」はエネルギーラインのこと。これはタイ伝統医学の「セン」に相当しますが、身体の中心を通る「スマナ」こそ一致しますが、左右に走る「ピンカラ」と「イッタ」の通り道は異なるというレベルではなく、スマナを軸として身体の中心を右回り、左回りで螺旋を描くようにして存在しています。全く考え方が違うのがご理解いただけると思います。東洋医学においてもツボの通り道である経絡が存在しますが、「セン」と比較すると、エネルギーラインの通り道は約8割程度合致します。そこで、正経12経脈と奇経8脈の通り道と「セン」の通り道を比較分析することで、エネルギーライン1本1本の意味が深く解明でき、具体的なアプローチに応用することができます。TTMAは、タイ伝統医学を中心に多くの伝統医学、古典医学、東洋医学を用いて、TTMAの研究機関としても科学的なアプローチを試みていきたいと考えています。多くのセラピストやマッサージ師がクライアントの体調を整えることができるようになって、たくさんの人が健康と笑顔を取り戻せることを願っています。 |