東洋医学において特徴的な基本的な考え方に「陰陽五行説」があります。これは、「陰陽論」と「五行説」の二つの説から成り立っています。「陰陽論」では、自然界の全てのものを「陰」と「陽」の相反する二つの要素でとらえます。「太陽と月」、「昼と夜」、「動と静」など、相互に対立・依存しながら絶えず変化している関係のことです。「陰」と「陽」を示したシンボルマークが「陰陽太極図」です。「陰」と「陽」の要素はお互いの過不足を補いながら、最適なバランスを保っています。この二つのバランスは絶対的に定まったものではなく、その時々で流動的に変化します。特に体内の陰陽は常に自然の影響を受けて変化するため、体内外のコンディションを整え、バランスを保つことが大切です。
東洋医学では、人と宇宙(自然)を一つの統一されたものとみなしています。その統一された世界のなかに、「陰」と「陽」という2つの概念があります。それらは、対立したり、制約したりしながら共存していると考えています。つまり、人の健康も「陰」と「陽」のバランスであると考えます。人が健康な状態でいるときというのは、からだにおける陰と陽のバランスが上手く保たれています。しかし、陰陽のどちらかが強くなりすぎたり、逆に弱くなりすぎたりすると、陰陽のバランスが崩れて健康ではなくなっていきます。人には本来、陰と陽のバランスを自然に回復する機能や能力が備わっています。夏になれば、からだの内部の陽が強くなりますから、汗を出して陽を下げるようにします。冬には汗を出す器官の汗腺を閉じて陽が逃げないように、弱くならないように調節します。この働きは、自律神経の働きに見ることができます。「交感神経」と「副交感神経」とのバランスで生命維持をコントロールしている機能のことを自律神経と呼んでいます。活発に行動しているとき、「交感神経が優位」といいます。逆にゆったりくつろいで休息しているときを「副交感神経が優位」と表現します。人は、夢中で獲物を追いかけているときなど、交感神経が優位になっているときには、ちょっとした怪我にも気づかないくらいの状態になります。しかし、これだけでは身体は細菌にむしばまれてしまいます。そこで副交感神経が優位になるタイミングも必要になります。人はゆったり休んだ時に痛みを感じ、怪我していることに自分自身で気づいたりします。このようにして、人間の身体に備わっている自律神経の機能がバランスを保っています。
自律神経は、意識することなく勝手に「内臓」「免疫」「ホルモン」を調整してくれている機能のことです。自律神経の乱れは、不安や緊張感が高まり、吐き気や多汗、全身のだるさ、頭痛、肩こり、手足のしびれ、動悸、不整脈、めまい、不眠などの症状として現れます。これが慢性化すると、自律神経失調症となり、2次的3次的に臓器に影響を与えて、どんどん身体機能がおかしくなります。自律神経は休息をとらずにストレスにさらされることで症状が悪化する疾病です。日常を忘れさせてくれるような環境に身を置いてみるなどして、気分転換を図ることが大切です。焚き火をしてみたり、自然の風に吹かれてみたり、森の空気を吸ってみたり、自然環境に触れるなどの時間をとることが望ましいでしょう。 |